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さて本日は、文法について書きたいと思います。
日本語を教えていると、生徒様から「どうしてここで〜ためにが使えないんですか」という質問をいただきます。
ために、は目的や手段を表す文法です。合格するために勉強する、店を持つために貯金する、などのように使います。

多くの教科書は、「動詞辞書形に続けて使います」、「名詞のあとには、のを入れます」、という形を説明します。
しかし本当に大切なのは形ではなく、話し手がどんな未来に向かって行動しているのか、という点です。〜ためには目的を示すとよく言われますが、正確には「意図の向かう先」を示す表現だと感じています。
たとえば「熱を下げるために薬を飲みました」という文があります。生徒様はよく「熱が下がるかどうかはコントロールできませんよね」と言います。それはその通りですが、ここで大事なのは結果が完全に操れるかどうかではなく、話し手が「薬を飲めば熱が下がるはずだ」という意図を持って行動している点です。目的として扱えるので、ためにが自然に使えるのです。
これは「早く治すために休みました」や「やせるために運動しています」でも同じです。治ることや体重の変化は完全にはコントロールできませんが、生徒様がその未来を目指す意志を持っているので、ためにが使えます。
ためにを使えるかどうかは、実現可能性ではなく「目的として意識できるかどうか」で判断します。
生徒様にとって本当に知りたいのは、どの形を使うかではなく、「自分の気持ちや意志をどう表せばいいのか」という点なのだと思います。文法は形の暗記ではなく、心の向きをどう言葉にのせるかの技術です。ここを理解していただくと、生徒様は一気に自由に文章を作れるようになります。
文法は、生徒様の心の動きを言葉に変えるための大切な道具です。これからも、生徒様の未来を広げる文法説明を続けていきたいと思います。
